観葉植物を育てている方であれば、「ハイドロカルチャー」という言葉は一度でも耳にしたことがあるのではないでしょうか。人工培土で植物を育てるハイドロカルチャーは、栽培に必要な物を手軽に用意でき、また場所を取らないため、初心者でも始めやすいメリットがあります。
ハイドロカルチャーでの栽培では、具体的にどのような準備が必要なのか、またおさえるべきポイントなどはあるのか、各項で解説していきます。
観葉植物が育てられる「ハイドロカルチャー」とは
ハイドロカルチャーとは、鉢植えに土を入れて育てる方法とは異なり、基本的にハイドロボール等に代表される人工培土と水で植物を栽培することを指します。
土を使用しないことで得られるメリットも多く、手軽に始めることができるため、植物の育成が初めての初心者の方にもおすすめです。
混同されがちな言葉に「水栽培」と「水耕栽培」がありますが、「水栽培」は人工培土は用いずに水のみで育て、「水耕栽培」は水と肥料を使用して栽培する方法になります。
ハイドロカルチャーの種類
ハイドロカルチャーと一口に言っても、種類はさまざまあります。
以下の項目で素材ごとにどのような特徴があるのかを紹介していきます。
【ハイドロボール】
- 粘土質の土を焼成した多孔質で空気を取り込みやすい人工の石
- 生成過程で高温焼成されているためほぼ無菌状態で臭いを出しにくい
- 粒は比較的大きめ
- 腐敗物を吸着する力は無いため根腐れに注意する必要がある
ハイドロボールは、直射日光に当たると水を含む部分が蒸れてしまうため、日差しとの相性が悪いです。そのため、日陰でも育ちやすい「ポトス・デコラゴム・テーブルヤシ・ガジュマル・モンステラ」を中心に育てていくとよいでしょう。
【ジェルポリマー】
- 紙おむつや除湿剤にも用いられる高吸水性ポリマーのこと
- 透明感のある見た目で涼し気な印象がありカラフルなデザインが多い
- 100均などでも購入可能
- 軽い素材のため小さい植物に向いている
- 95%が水分でできているため多肉植物などの貯水性の高い植物には不向き
基本的に水栽培ができる観葉植物ならジェルポリマーで育てることができます。なかでもおすすめなのは「ポトス・アイビー・オリヅルラン・ミント」です。
【ゼオライト】
- ハイドロボールと同様に多孔質の鉱物
- ハイドロボールより小粒でカラーバリエーションも多い
- アンモニアなどの有害な物質を吸着することで根腐れ防止に高い効果が期待できる
- 時間が経つと崩れて凝固したり水質汚濁を引き起こすことがある
カラーバリエーションの多いゼオライトは、インテリアとして飾ることができます。そのため、リビングに置きやすい「パキラ・ガジュマル・テーブルヤシ」がおすすめです。
ハイドロカルチャーに向いている観葉植物4選
ハイドロカルチャーでは容器にある程度水を溜めた状態になるので、日光に当て過ぎると、コケ等が生えたり水温上昇による根腐れを引き起こしたりする心配があります。
そのため、日光の少ない環境でも育つことのできる耐陰性に優れた植物がハイドロカルチャーにはおすすめです。
以下の項目で耐陰性のある観葉植物を紹介していきます。
モンステラ
葉の大きさや形は品種によってことなりますが、モンステラは艶のある切れ込みが入った葉が特徴的な、観葉植物として定番の品種の一つです。
熱帯アメリカが原産で、気根と呼ばれる空気中の酸素を取り込む根っこを茎から生やし、ほかの植物に巻き付いて自生しています。
寒さには弱いですが耐陰性があるため、レースのカーテン越しに、窓際の日当たりの良い室内に置いてあげると良いでしょう。
ハイドロカルチャーで育成する場合も、半日陰で管理して、水のあげ過ぎに注意してください。
ガジュマル
ガジュマルは沖縄を含む国内にも自生している、太く絡み合ったような幹が特徴的な熱帯性の植物です。モンステラ等と同様に気根を生やし、自分の幹やほかの植物に絡みつかせながら成長していきます。生命力がとても強く、自然のガジュマルは発達した気根等でコンクリートを突き破ったりほかの植物を絞め殺したりしてしまうこともあるようです。
力強さが特徴的ですが、日光を好む植物のため、直射日光は避けつつ、カーテン越しに適度に日光を取り入れてあげる必要があります。
サンスベリア
別名「トラノオ(虎の尾)」とも呼ばれる、葉の表面の縞模様が個性的な多肉植物です。
多肉植物は乾燥に強く多湿に弱いため、水やりの頻度や風通しには特に注意を払ってあげる必要があります。ハイドロカルチャーで育てる場合は、根腐れしやすいのでこまめに根をかくにんするようにしましょう。
パキラ
観葉植物の定番品種であるパキラは、鮮やかな緑の葉を広げる熱帯性の植物で、丈夫で育てやすく、初心者向きの観葉植物の一つでもあります。
上記で紹介してきたほかの観葉植物と同様に、耐陰性があるため、ハイドロカルチャーでも栽培しやすいです。
日光を取り入れてあげることはやはり大切なので、日当たりの良いカーテン越しの窓辺等で、日光浴をさせてあげると良いでしょう。
ハイドロカルチャーで観葉植物を育てるメリット
ハイドロカルチャーで植物を栽培する時に、土栽培とはどのような点が異なるのでしょうか。
使用する素材が変われば管理方法も異なります。
ハイドロカルチャーだからこそ得られる栽培のメリットについて順に解説していきます。
清潔に育てられる
土で観葉植物を栽培していると、いつの間にか虫が湧いてしまった、なんて体験をされたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
コバエが土に卵を生みつけたりすると、そこから虫が発生してしまいます。
一方、ハイドロボール等の人工培土の場合、生成の過程で高温焼成されほぼ無菌状態だったり、無機物のため虫が発生しづらいです。
また、雑菌も繁殖しづらいため、土の臭いが気になる場合も、人工培土に変えることで改善されるかもしれません。
根の観察ができる
ハイドロカルチャーの場合、水やりのタイミングを見極めるためにも、透明で中の様子が見える容器の使用がおすすめです。透明な容器にすると、土栽培では普段は見ることができない根の生育状態を観察することができます。
ハイドロボールなどに根っこが絡みつき、鉢の中で広がっている様子をそのままの状態で見ることはなかなか無いので、土栽培とは違う楽しみ方ができますね。
繰り返し使えてコスパが良い
ハイドロボール等はしっかり汚れを取り除き、消毒をすれば再利用することができます。
もちろん再利用の回数には限度がありますが、一回きりで捨てずにもう一度活用するだけでもエコになりまね。
再利用する際は、まずハイドロボールの汚れを水洗いしながら歯ブラシ等で丁寧に取り除きます。そのあと、熱湯をかけて消毒することで清潔な状態を保ちます。そのあとは、屋外等で天日干しをして、完全に乾燥させたら除菌完了です。
インテリア性が高い
ハイドロカルチャー用の資材には、カラフルでデザイン性の高いものが多いです。そのため、窓際や靴箱、デスクの上に飾り、インテリアとして楽しむことができます。
お部屋の雰囲気と合わせて鉢や人工培土を用意すると、よりおしゃれな空間を作ることができるかもしれません。
100均などにもカラフルなハイドロカルチャー用の資材が販売されているので、手軽にデザインを変更できるのも嬉しい点ですね。
ハイドロカルチャーで観葉植物を育てるデメリット
植物は土の中で根を張り成長していくものなので、本来の植物の育成環境とは異なった栽培方法になってしまう点がデメリットが発生する大きな理由です。
しっかりとお手入れすることで防げるケースもあるため、デメリットをしっかりと把握しておきましょう。
根腐れしやすい
土栽培では鉢の底に余分な水が流れ出るように穴が開いていますが、ハイドロカルチャーの場合、基本的に水の排出は必要とされていません。
更に、ハイドロボール等の人工培土は無機物であるため、基本的に鉢の中に発生した代謝物を分解することができないので、根腐れしやすくなります。
ハイドロカルチャーで育てる場合は、こまめなメンテナンスが必要になるでしょう。
あまり大きく育たない
ハイドロカルチャーは本来の植物の育成環境とは異なるため、土栽培の時のように植物がぐんぐん大きく成長しません。天井まで届くような、大型の観葉植物にまで育てたい、というような希望がある場合は土栽培の方がおすすめです。
可愛らしいサイズで、インテリアのアクセントとして楽しみたい場合はハイドロカルチャー栽培でも問題無いでしょう。
弱りやすい
ハイドロカルチャーでは植物の生育が緩慢になるため、その分人間で例えるところの「体力が無い」状態に陥りやすいです。体力が無いと、少しの環境の刺激で調子を崩しやすくなります。
調子を崩したあとに元気になることも大変なため、ハイドロカルチャーでの栽培であっても、日頃からきちんと植物が過ごしやすい環境に整えてあげましょう。
ハイドロカルチャーで観葉植物を上手に育てるコツ
ハイドロカルチャーでの栽培で問題が発生しないようにするためには、どのようなポイントに気を付けて管理してあげれば良いのでしょうか。
ハイドロカルチャーで植物を上手に栽培してあげるためのコツについて、以下で詳しく解説していきます。
置き場所
ハイドロカルチャーで育てている植物は、基本的に屋内の窓際、カーテン越しに日光を取り入れることができる場所に置きましょう。
耐陰性の高い観葉植物を選んだとしても、やはり植物の育成に日光は欠かせません。
直射日光は葉焼けの原因になったり、容器内に残っている水の温度が上昇し、コケや藻の発生、雑菌の繁殖を引き起こしたりする可能性があります。そのため、半日陰の風通しの良い場所で管理し、置き場所にも注意を払いましょう。
水やり
土栽培以上に気を遣う必要があるポイントが水やりです。土栽培で用いる鉢とは異なり、ハイドロカルチャー用の容器には水を逃がすしくみがありません。
水を多くあげすぎてしまうと根腐れの原因になるため、容器の底に水が無くなった上で、数日経ってしっかり乾燥してから水をあげましょう。
水は、容器の1/5程度を目安に入れてください。
植え替え
ハイドロカルチャーでも、半年から1年に1回程度の植え替えは必須です。
これはハイドロボール等の人工培土と容器の洗浄と、根腐れ防止剤を入れなおすことを目的に行います。ハイドロカルチャーでは有害物質を分解してくれる有機物がいないので、しばらくするとどうしても雑菌が増えてきてしまいます。
植物が過ごしやすい環境に整えるために、定期的なメンテナンスを行いましょう。
まとめ
ハイドロカルチャーで観葉植物を育てるためのコツについて解説いたしました。
資材が簡単に揃えられる分手軽に始めやすいですが、きちんと状態をチェックして管理してあげる必要があるのは土栽培と同じです。
生育が緩やかになる分、水やりと日光浴は適切な頻度で行い、植物が調子を崩さないようにケアしてあげたいですね。
ハイドロカルチャー用の苗も販売されていますので、土栽培していたものをハイドロカルチャー育成に切り替えることに不安がある方は、ネット等で専用の苗を購入しても良いでしょう。
手軽に観葉植物を取り入れる方法として、ぜひハイドロカルチャーを検討してみてください。